雑誌正論掲載論文

「早く結婚しろよ」批判報道が封殺したこと

2014年08月15日 03:00

東京都議 鈴木章浩/麗澤大学教授 八木秀次/ジャーナリスト 細川珠生 月刊正論9月号

 ――東京都議会で6月、少子化などを議論していた独身の塩村文夏議員に「早く結婚したほうがいいんじゃないか」などとヤジが飛んだことが、セクハラヤジとして社会問題化しました。最初に名乗り出て謝罪した鈴木章浩議員は、新聞やテレビで非難を浴びたわけですが、少子化が進む日本でそんなに問題のある発言でしょうか。ぜひ議論していただきたいと思います。無論、ヤジは上品とはいえません。まずは改めて鈴木議員に、この点について考えをうかがいたいと思います。

 鈴木 私自身、議会では不適切な発言であり、不必要な発言であったと深く反省しています。そのことについては本当にお詫びしたいと思っております。「セクハラ」という見方をされることを否定もできません。塩村さんが私の言葉に傷ついたとおっしゃっているので、改めて心からお詫びを申し上げたい。また、配慮を欠いた私の発言で多くの方にご心痛を与えてしまったことにも、改めてお詫びを申し上げます。申し訳ございませんでした。

 八木 鈴木議員はこう言っていますが、この問題を考える上で、議会において、ヤジは言論の一つであるということは認識しておくべきです。議会は有り体に言えば、言論による政治闘争の場ですから、ヤジは禁止されていない。そこが、一般には認知されていないのかなとは思います。

 細川 ただ、議員には品位が求められます。野放しになっているとすれば、鈴木議員の御発言の内容は別として、議会のあり方を考え直すいい機会です。私が過去に国会を取材した時、ヤジでほとんど何も聞こえないぐらいだったのを覚えています。フリーのジャーナリストは、後ろの方の一般傍聴席に座るからかもしれませんが、過剰なヤジは問題だと思いました。どこかスパイスのきいたヤジは効果的かもしれませんが、単に騒いでいる議場の雰囲気はいかがなものでしょうか。

 鈴木 申し訳ございません。ただ、あのとき私は、晩婚化、少子化などについて質疑していた塩村さんに対して、素朴に「早く結婚することが大切なのではないか」と感じ、それを言葉にしてしまいました。議会というのは議論を闘わせるところであり、私の真意が封殺されてしまったことには、正直、残念な思いもあります。

鈴木「その場で確認していただきたかった」

 ――真意を伝えたいなら初めから名乗り出るべきだったのでは? しばらく名乗り出ず、「ヤジは辞職に値する」とまで発言されていましたね。後から名乗り出た議員よりは遙かに早かったにしても、その時点では嘘をついたことになります。

 鈴木 名乗り出るのが遅くなり、また、結果的にウソをついてしまったことも反省しております。

 八木 鈴木議員をかばうわけではないけれど、私が自民党関係者に聞いたところでは、すぐに名乗り出られない事情が、内部でいろいろあったそうです。いろいろ検討された結果、あのタイミングになったと聞きました。同時期に、自民党東京都連会長である石原伸晃環境相が、福島県をめぐって失言した問題もありました。鈴木議員が名乗り出たお陰で、石原環境相の謝罪報道は、比較的小さくなっています。その辺りの真相を、ぜひ聞かせてもらいたいですね。

 鈴木 そういうことについては、私は何も述べられません。とにかく、改めてお詫び申し上げさせて下さい。

 八木 ご本人としてはそうとしか言えないのかも知れませんが、それでは批判が続きますよ。私がマスコミから聞いたところでは、「ヤジは辞職に値する」と答えたのにも事情があったそうですね。当時、塩村議員のプライベートなことについてもヤジがあったといわれていて、そのことまであわせて記者から質問されたため、そんなことまでヤジった議員がいたとしたら辞職に値するというニュアンスだったと聞きましたよ。ほかに自民党以外からも品のないヤジはありませんでしたか。その辺もきちんと説明すべきでしょう。

 鈴木 …。私が言えることは、塩村議員側の人たちは後になって声紋分析をするなどと騒いでいましたが、ご本人が聞いていたのですから、その場で議員の名前を挙げて議事録に残すとか確認をするとか、そういうことをしていただければ、よかったのではないかということだけです。その方が、より議会の改善に繋がっていったんだろうと思います。その機会を逸してしまったというのは、もったいないなと思っています。

 八木 塩村議員はヤジを受けた時、少子化問題と不妊治療のことを質問していたわけですが、鈴木議員だけではなく質疑を聞いていたほかの自民党議員らの間にも、「そういう一般論を述べる前に、あなた当事者意識を持ってはいかがですか」という雰囲気があった。少子化、人口減少は本当に深刻だというのが、あの場にいる人たちの了解事項だったのに、ヤジによって彼女が傷つけられたという部分だけをセクハラとして問題にするのは、私は違和感がありますね。

細川「議員活動よりも結婚、出産を」

 細川 「早く結婚しろ」というのがセクハラだとすれば、私自身もセクハラは受けてきたと言うべきでしょう。私は30歳で結婚し、36歳で長男を産んだのですが、その間、「早く子供を」とよく言われました。そんなこと言われなくても分かっている―という感情はありましたが、「まあ、それも笑顔で返すぐらいの度量が必要だ」と。少なくとも、世間一般はそう思うのですから。まして塩村さんは公人である以上、そこは受け止めるべきではないでしょうか。そこをかわせるだけの能力がないと議員を務める資格があるのかなと思います。女性でも、がんばってもどうにもならないものがあるという場合、そういう発言にとても傷つくことは事実ですが、一方で、自分の責任において結婚、出産していないこともある。正直言って、私は、塩村さんは35歳というご年齢ですから、まず、結婚して子供を産むことを、議員活動よりも優先した方がよいと思います。

 八木 「早く結婚を」という言葉をセクハラだから不適切だとして封殺するのは、一種の「ポリティカル・コレクト」です。自分たちから見た政治的な正しさから言葉狩り、言論封殺で政治運動を行うわけです。現にヤジ問題は「セクハラ」問題として、フェミニストたちにより意図的に、拡大されました。7月7日も女性と大学の教員ら約90人の集まりがありましたが、そこでは「セクハラを許さない」という声が上がり、都議会に要請文を出すということでした。「これで終わりにしてはならない」という意図がはっきりあります。ヤジが「セクハラヤジ」と呼ばれ、「セクハラ」そのものになる。これは恐ろしい。なぜなら、ただの発言などたいしたことないことでも、物理的に体を触ったり卑猥なことをしたり、そういうことと同じカテゴリーでくくられると、世間のイメージは途端に悪くなるからです。鈴木議員もダメージを受けたのではないですか。

 鈴木 女性が多い会合とか青少年関係の会合とかは、出席しないでくれと言われています。もちろん、支持者の方には、「よくよく考えれば、たいしたことないじゃないか」と言われることが多いです。ありがたいことに。

 八木 大田区(東京都)の女性区議から、議員辞職を求める声明を出されていましたね(笑)。

 鈴木 私の事務所にも、様々な誹謗ファクスが来ますが、住民の方かと思って、よくよく見ると、共産党の女性区議の事務所の名前が入っていることもあります。

続きは正論9月号でお読みください

■ 鈴木章浩氏 昭和37(1962)年、東京都大田区生まれ。青山学院大法学部在学中に父親が死去し、家業のクリーニング会社「光伸舎」に入社。大田区議2期を経て平成19年、都議補欠選で初当選。現在3期目。今年6月、都議会ヤジ問題で謝罪し、自民党会派離脱。

■ 八木秀次氏 昭和37(1962)年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業。同大学院政治学研究科博士課程中退。専攻は憲法学。著書に『憲法改正がなぜ必要か』など。平成14年、第2回正論新風賞受賞。教育再生実行会議、法務省相続法制検討WTの各委員。

■ 細川珠生氏 昭和43(1968)年、東京生まれ。聖心女子大英文科卒。父親の故細川隆一郎氏との父娘関係を綴った「娘のいいぶん~がんこ親父にうまく育てられる法」で日本文芸大賞女流文学新人賞。平成7年より「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本)に出演中。