正論大賞 受賞者の告知

 自由と民主主義のために闘う「正論路線」を発展させた言論活動に贈られる正論大賞に、日本財団会長の笹川陽平氏(80)が決まった。新進気鋭の言論人に贈られる正論新風賞には評論家、江崎道朗氏(57)が、正論大賞特別賞に台湾・元総統、李登輝氏(96)が選ばれた。笹川氏、江崎氏はともに産経新聞「正論」執筆メンバー。

 正論大賞は今回が35回目、新風賞は20回目。笹川氏は年頭の「正論」欄で「中国古典にとらわれず新元号を」と主張し、元号が初めて日本の古典(国書)から採用される流れをつくったほか、「対外情報発信態勢の確立を」「人材育成に偉人教育の活用を」など国の将来を見据えた言論活動を展開。またハンセン病抑圧活動を始めとする、40年以上にわたる慈善活動も「正論大賞」にふさわしいとされた。

 江崎氏は安全保障、インテリジェンス、近現代史を専門とする気鋭の論客で、東京裁判史観からの脱却やヴェノナ文書で裏づけられる大東亜戦争の真相など、最新歴史研究を取り込んだ言論活動で日本の論壇に新風を吹き込む姿勢が評価の対象となった。

 李氏は中国共産党との間で硬軟とり交ぜた政治手腕を発揮し、「哲人政治家」として東アジアの歴史に大きな足跡を残した。また日本統治時代の大正12(1923)年に台湾で生まれ、旧制台北高校を経て京都帝国大学(現・京大)で学び、戦後の日本人が失った「公」のために尽くす純粋な日本精神を持ち続け、さらに台湾で民主化を推し進めた信念は正論大賞特別賞にふさわしいとされた。

 正論大賞の正賞はブロンズ彫刻「飛翔(ひしょう)」(御正進(みしょう・すすむ)氏制作)で副賞は賞金100万円、新風賞の正賞は同「ソナチネ」(小堤良一(おづつみ・りょういち)氏制作)で副賞は賞金50万円。特別賞の正賞は同「あゆみ」(小堤氏制作)。

第35回正論大賞

正論大賞・笹川陽平

笹川陽平氏

 昭和14年、東京都生まれ。明治大学政治経済学部卒業。全国モーターボート競走会連合会会長、日本財団理事長などを歴任。40年以上にわたり、ハンセン病の制圧と患者差別撤廃に取り組んできた。国際法曹協会「法の支配賞」、ガンジー平和賞など受賞多数。令和元年、旭日大綬章を受章し、文化功労者にも選出された。現在、日本財団会長、世界保健機関(WHO)ハンセン病制圧大使、ミャンマー国民和解担当日本政府代表などを務める。著書に『外務省の知らない世界の“素顔”』(産経新聞社)、『隣人・中国人に言っておきたいこと』(PHP研究所)、『残心 世界のハンセン病を制圧する』(幻冬舎)など。平成18年から産経新聞「正論」執筆メンバー。

第20回正論新風賞

正論新風賞・江崎道朗

江崎道朗氏

 昭和37年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て平成28年夏から本格的に評論活動を開始。主な研究テーマは、近現代史、外交・安全保障、インテリジェンスなど。社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員。産経新聞「正論」執筆メンバー。
 主な著書に『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(第27回山本七平賞最終候補作、PHP新書)、『日本占領と「敗戦革命」の危機』(PHP新書)、『日本は誰と戦ったのか』(第1回アパ日本再興大賞受賞、ワニブックス)など。

正論大賞特別賞

正論大賞特別賞・李登輝

李登輝氏

 1923年1月15日、日本統治下の台湾生まれ。旧制の台北高校を経て、京都帝国大(現京都大)で農業経済学を学んだ。米コーネル大で博士号。台北市長などを経て、副総統だった88年1月、蒋経国総統(当時)の死去に伴い総統に昇格。中国国民党の主席も兼務し、政権中枢から民主化を進めた。96年3月実施の初の総統直接選で当選。2000年5月まで12年あまりの総統在任中に「台湾人意識」教育の普及や、東南アジアなどとの実務的な対外関係の構築に努めた。