雑誌正論掲載論文
社会主義も呆れる民主党政権の補償費バラマキ
2011年12月01日 03:56
「月10万円貰いながらネイルアートの勉強をしませんか? 興味がなければ、教室で“寝入る”だけでもかまいませんよ(笑い)」「貸し付けという形で、実質返還不要のお金を国から貰いませんか?」(月刊正論1月号)
いきなりこう言われたら、読者は何の勧誘だと思うだろうか。後から大金を毟り取られる悪質なキャッチセールスかと考える人も多いだろう。しかし、同じ人の口からは、こんな甘いささやきも聞こえてくるのである。
「そんなに無理してまで働きたいなんて言わず、生活保護を貰いませんか?」
そう、これらは、「セーフティネット」をお題目に国が今、地方自治体やハローワークなどを通じて行っている「勧誘」の文句なのである。社会保障費を狙う悪質業者の「貧困ビジネス」だと疑う人もいるかもしれないが、決してそうではない。疑う人も、私が仲間たちと実際に役所の窓口などで「体験」した事実を以下に記すので読んでいただきたい。すべて、録音や証言などの証拠のあることばかりである。
社会保障のうち生活保護受給者の急増が最近、騒がれている。平成22年度の保護費は3兆円を突破し、23年7月の生活保護受給者は205万495人で、過去最多だった戦後混乱期の昭和26年を上回ったというニュースも流れた。マスコミにミスリードされて受給者急増は不況のためだと信じ込んでいる人もいるだろう。しかし、そこには大きな落とし穴がある。
自民党政権時代には、生活保護を貰えず老人が餓死した、といったニュースが再三、話題になった。ところが、民主党に政権が移って以降の我が国では、健康で就労可能な65歳以下のいわゆる「現役層」でも、いとも簡単に生活保護を貰えるようになったのである。
これだけでも血税の無駄遣いにつながるが、「セーフティネット」にかける民主党政権の執念はすごい。ついには、就職支援をうたい、低所得層の主婦が毎月10万円を貰いながら「ネイルアート教室」に通えるという制度まで作り上げた。ここに趣味あるいは10万円ほしさだけで通われたらたまったものではないが、受講者全員がネイルアートの店に就職するわけでもあるまい。卒業試験もなく、資格試験を受ける義務もないのだ。さては主婦の爪を飾り立て、水商売か風俗にでも沈めて稼がす魂胆か…と妄想したくもなるハチャメチャぶりである。
古今の社会主義国家でさえ、こんな馬鹿げた社会保障制度にはお目にかかれないだろう。民主党政権による悪質なバラマキ政策である。もちろん、国や地方の財政赤字がこれだけ深刻化していても、本当の弱者救済のための支出は必要だという議論はあり得る。しかし実際はそうはなっていない。それらの金の多くが、悪徳業者や毎日パチンコに通うだけの「偽装弱者」に流れているのだ。その結果、支援を受けられず危機に瀕している本当の弱者もいるのである。
民主党政権のバラマキはこれまで、「4K(子ども手当、高速道路無料化、高校無償化、農家戸別補償)」でのみ語られてきた。今回取り上げる社会保障がらみのバラマキの拡大はほとんど報道もされず、多くの国民の知らないところで進められてきた。その結果、我が国は根本的に変わってしまった。真面目な人間、困っている人間が馬鹿を見て、悪人や狡い者が得をする国に。
私は平成23年4月、三重県松阪市で、国が民間企業に委託して行う「職業訓練校」の講師を務めた。「セーフティネット」政策の一つで、「基金訓練」と呼ばれる就職支援の講座であった。
基金訓練は、平成20年末から翌年頭にかけて東京・日比谷公園に「年越し派遣村」が開設されて高まった「セーフティネット」運動を受け、自民党・麻生政権時代の21年7月にスタートした制度である。失業保険を貰えない非正規労働者を主な対象とし、学費は原則無料で、月に最低10万円(被扶養者がいる場合12万円)を受給できる。さらに月最低5万円の貸し付けまで受けられるうえ、返還不要の場合さえある。
その直後に自民から政権を奪った民主党は、制度を徹底的に改悪し続けてきた。ついには、この23年10月、新たに「求職者支援制度」と看板を変え、恐るべきバラマキを始めたのだ。そして民主党べったりの一部マスコミは、積極的にこのバラマキに協力している。(続きは月刊正論1月号でお読みください)