雑誌正論掲載論文

スガノミクスはデジタル景気の波に乗れるか 経済快快

2020年10月25日 03:00

産経新聞特別記者 田村秀男 「正論」11月号

 「アベノミクスの前進」を掲げる菅義偉政権が誕生した。大きく分けると、行政のデジタル化、携帯料金の引き下げなど情報技術(IT)社会への転換、さらに賃金の引き上げと、安倍晋三前政権では果たし切れなかった経済成長戦略を打ち出した。「スガノミクス」である。めざすべきは内需主導で新型コロナウイルス・ショックがつくり出しつつある新たな景気循環の波に乗ることだ。

半面では、新たな市場機会を生み出す。人と人の接触を抑制しながら、経済活動を正常化させる試みの広がりに伴い、対面しなくても密接なコミュニケーションを可能にするデジタル情報技術(IT)需要に新たなうねりが見込まれるからだ。

 それでも収益への欲望に満ちた企業家や投資家たちは、足下は真っ暗闇であっても、地平の彼方にかすかに見える光明に向かって突き進む。端的に示すのが世界の強欲マネーが集まる米国の株式市場である。

 グラフ1は米国の日毎のコロナ新規感染者数の増減と株価を組み合わせた。変動のばらつきをならすために、いずれも十日間平均値で表している。第一の特徴は、コロナ感染の三月末から四月末への感染第一波、六月中旬から八月中旬にかけての第二波の大きなうねりにもかかわらず株価が上昇気流に乗っていることだ。もう一つは、九月初めから最新時点にいたる期間で、感染の波が引き出すと株価が下落局面に転じた点だ。

感染波が細ると株価が調整局面を迎えるのはなぜだろうか。経済実体からかけ離れた株価の上昇は一般にバブルだとみなされがちで、今回もその例外ではないと言い切れるだろうか。

 目を引くのは、株価指数のうち、ナスダック(NASDAQ)相場上昇がダウ工業平均をかつてない速度でしのぎ、ダウを引っ張ってきたことだ。ナスダックは通称「GAFA」を構成するグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルに代表される情報技術(IT)巨大企業を筆頭にIT関連の新興企業群で構成される。それに対し、ダウ工業平均構成銘柄にはGAFAのうちアップルが含まれてはいるものの、金融大手や在来型業種大手で占められている。現下の米株価はIT主導であり、コロナ禍の巨大な波を乗りこなすサーファーのようなものである。

  菅首相は財政均衡派か

 IT化、デジタル化は不可避であり、コロナへの恐怖はそれを大幅に早めるきっかけになる。いくつかの専門家の分析をみると、コロナ感染が第三波、四波となって今冬から来年にかけて世界各地域に襲ってくる長期化もありうる。

 それでも米国内に楽観ムードが漂うだけの根拠はある。

 続きは「正論」11月号でお読みください。