雑誌正論掲載論文
政界なんだかなあ 歴史的使命を終えた連合
2020年11月25日 03:00
産経新聞論説委員・政治部編集委員 阿比留瑠比 「正論」12月号
日本最大の中央労働団体、日本労働組合総連合会(連合)は、何がやりたいのか。何のために存在しているのか。少なくとも平成元年十一月の誕生以来、延々と続けてきた政治活動は、日本の政治を停滞させ、国力を棄損しただけではないかと思える。
連合は十月十五日の中央執行委員会で、次期衆院選に向けた基本方針を正式決定した。比例代表での支援先は原則として立憲民主党としつつ、新たに国民民主党の候補者も支援することを明記した。
立民が新たな綱領で「原発ゼロ社会」などを掲げたことには、民間労組である電力総連や自動車総連など連合傘下の六つの産業別労働組合(産別)が反発している。
そのため、組織内議員の一部が立民への合流を拒んだことに配慮し、分裂を回避しようと玉虫色の決着を図ったものだが、それでも国民民主からは、比例代表の得票が伸び悩むとして不満が上がっている。選挙区で敗れると比例復活は難しくなるからである。
連合は股裂き状態でもはや、傘下の組合をコントロールできていない。立民と国民民主は次期衆院選での選挙協力を模索するが、こうした現状では難しいだろう。
結局、連合の基本方針はどっちつかずで、明確な方向性が見えない。いや、もともとそんなものはないのかもしれないが……。
政権交代がもたらした混乱
連合は、旧日本労働組合総評議会(総評)、旧全日本労働総同盟(同盟)などが合流して生まれた。公務員労組系の総評系は社会党(現社民党)、民間労組系の同盟系は民社党を支持していた経緯から、合流後も別々に政治活動を展開していた経緯がある。
確かに平成五年には、非自民・非共産八党派の連立政権、細川護熙内閣をつくり、二十一年には旧社会党と自民党田中派脱藩組を中心とした民主党の鳩山由紀夫内閣成立を実現した。
そして現在、再び旧民主党系議員らを糾合して三度目の政権獲得を目指しているが、それは本当に国民のためなのか。細川政権や鳩山、菅直人、野田佳彦各政権で人々の暮らしは豊かになり、幸福度は増したといえるのか。
連合が求めた雇用創出などの成果は「悪夢」とまで呼ばれた民主党政権下では実現せず、連合が敵視してきた自民党の安倍晋三内閣で大きな成果を残した。ベースアップや最低賃金引き上げなどの諸政策もそうである。
連合がそれでも政権交代を目指すことに意味はあるのか。ただ政治運動を続けているうちに、運動そのものが自己目的化してしまっただけではないのか。
連合は長年、傘下の組合員から徴収した組合費を使い、組合員を動員して議員候補の集会やポスター貼り、電話作戦を長年行ってきた。それは明確な目的あってのことではなく、単なる惰性によるものではないか。
結論から言えば、過去の連合による政権樹立は失敗そのものである。政権交代にはしゃいだマスコミや一部の利得者を除いて、誰を喜ばせたというのだろうか。仮に政治に新たな息吹と活力を一時的にもたらした部分はあったにしろ、それだけである。
非生産的な政治の混乱は経済にも外交にも悪影響を及ぼし、国益を害した部分の方が大きい。
続きは「正論」12月号でお読みください。