雑誌正論掲載論文

あまりにひどい国会の体たらく

2020年03月15日 03:00

産経新聞政治部編集委員兼論説委員 阿比留瑠比 「正論」4月号

根本的に間違っていないか

 国会とは何か。手元の辞書によると、国権の最高機関で、国の唯一の立法機関とある。ちなみに国権は国家権力、国の統治権のことを指す。民主主義国としてわが国が存続し、さらに発展していくために、必要不可欠の存在であるのは言うまでもない。

 ところが、われわれが現在、テレビの国会中継やニュースで目撃している国会の風景はどうだろうか。野党の質問では新型コロナウイルスの感染拡大など論じられるべき喫緊の重要事項はおざなりにされ、ひたすら安倍晋三政権への難癖、嫌がらせ、揚げ足取りばかりが目立つ。そして政府・与党側も、それを上手くいなすことができないでいる。

 こんな学級崩壊状態で、いじめが蔓延するような国会なんていらないのではないか。

 国会審議は本当に必要なのか。野党は何のために存在しているのか――といった民主主義の根幹を揺るがしかねない深刻な疑問すら湧く。

 さらにマスコミが、物事の優先順位と事の軽重を無視して野党のピント外れの追及の背中を押すのである。例えば、朝日新聞は二月十三日付の社説「荒涼たる国会 安倍首相の責任は重い」で、安倍首相をはじめ政府側が悪いかのように一方的に断罪していた。

 「安倍首相の居丈高な反論やヤジ、しどろもどろの閣僚答弁‥‥。建設的な議論を通じて、よりよい結論を導きだす。そんな『言論の府』のあるべき姿からほど遠い光景が続いていることに暗然とする」

 「批判を受け止める懐の深さや、説得力のある言葉と論理で対抗しようという冷静さは感じられない」

 安倍首相のヤジとは、立憲民主党の辻元清美幹事長代行による十二日の衆院予算委員会での質問に対するものである。十年一日のように「桜を見る会」や森友・加計学園問題への官僚の対応を取り上げた辻元氏に、安倍首相は質問終了後、閣僚席からこんなヤジを吐き捨てた。

 「意味のない質問だよ」

 確かに、一国の首相が自らヤジを飛ばすことには、与党内にも自制を求める声がある。一般論で言えば、ヤジなどないに越したことはない。だが国会の実態は、テレビのマイクは必ずしも音を拾っていないものの、首相や閣僚の答弁中、野党議員のヤジで答弁が聞こえないことも少なくない。

 国民の生命を守るための新型コロナウイルスへの対応や、それに伴う経済的損失への対策、世界情勢の分析など目の前の重要課題を処理しなければならないときに、国会に長時間拘束されて不要不急のいいがかりのような質問に煩わされているトップが、その無意味さを指摘したくなるのも無理はないといえる。

 また、質疑では辻元氏の方が先にヤジっていたが、それは不問に付されているのもおかしい。朝日の社説は次のように締めくくっているにもかかわらず、辻元氏のヤジには触れていない。

 「言論の府にふさわしい論戦を実現する責任に与党も野党もない」

 実際、辻元氏の次の発言は聞いていて品性の欠片も朝日の言う論理も感じなかった。

 「総理、最後に申し上げます。鯛は頭から腐るという言葉をご存じですか。これは英語とかロシア語でもあるんですよ。死んだ魚の鮮度は頭の状態から判断できる。したがって、社会、国、企業などの上層部が腐敗していると残りもすぐに腐っていく。総理が桜とか加計とか森友とか疑惑まみれって言われているから、それに引きずられるように官僚に示しがつかない。(中略)子供の教育にも悪いです。(中略)ここまで来たら、原因は鯛の頭。頭を変えるしかないんじゃないですか。(中略)そろそろ総理自身の幕引きだということを申し上げます」

 つまり安倍首相のことを、根拠も示さずに腐っていると面罵したわけである。これが国会の質問だと言えるだろうか。いや、言葉の暴力であり人権侵害ではないか。

続きは、正論4月号をお読みください。

■ あびる・るい 昭和四十一年生まれ。早稻田大学政経学部卒業後、産経新聞入社。政治部で首相官邸キャップなど歴任。