雑誌正論掲載論文
病根は文在寅 迷惑行動も「反日」で英雄気分
2019年09月25日 03:00
産経新聞ソウル支局長 名村隆寛 「正論」10月号
韓国で七月、産経新聞を含む日本メディアのソウル支局や、日本企業の系列会社がある建物にネットメディアを名乗る人物や、大学生らが不法に押し入る事件が続いた。日本政府による半導体材料の韓国への輸出管理強化で、反日感情が高まる中での出来事だ。事件を起こした者は、不法であることも省みず、自らを英雄視しているかのようにやりたい放題を続けている。
メディアへの最初の事件があったのは七月十八日午前十一時半ごろ(日本時間同)。ソウル市内の韓国紙の本社社屋内にある産経新聞ソウル支局に、一階の警備員から電話があった。
「『産経新聞と話がしたい。産経新聞にインタビューさせろ』という男らが来ているのだが」という連絡だ。「また抗議か」と思い、仕事中だったこともあり、即座に拒否した。
数分後、支局のドアをたたく音がするや、白い韓国の民族衣装に帽子をかぶったかっぷくのいい七十歳ぐらいの男が部屋に入ってきた。三十代とみられるビデオカメラを持った男も一緒だった。どうやら警備員の制止を振り切ってやってきたようだ。
若い方の男は、侵入する前からビデオカメラを回し続けていたとみられる。民族衣装の男は部屋に入るや、「こちらが×××新聞の××階にある産経新聞です」とカメラに向かって勝手に実況中継を始めた。筆者は「出ていってください」「撮影しないでください」と制止しようとしたが、筆者の腕をつかんで逆に遮ってくる。その様子も撮影され続けた。
男二人の侵入当時、支局には筆者と日本人の同僚記者、韓国人の女性スタッフの三人がいた。とても仕事どころではないし、まず、話がかみ合わないし通じない。らちがあかず、筆者はいったん廊下に出て、同僚記者が一階の警備員を呼びに行った。その間、二人は支局の内部をなめ回すように撮影していたようだ。
女性スタッフがトイレに避難し、侵入者二人が部屋から出たのを確認して、筆者は部屋の外から支局のドアをロック。一階の警備員の所に行ったところ、「警察を呼ぶか」と聞いてきた。明らかにこちらは、住居への無断侵入や業務妨害を受けている。警察を呼んだところ、五分あまりですぐに来てくれた。
支局のある階に戻ると、侵入者二人はやはり支局前の廊下に居続け、民族衣装の男は日韓関係や産経新聞の記者に対する非難を繰り返し、もう一人がビデオカメラを相変わらず回していた。男は駆けつけた警察官がいる前で、大声で抗議文を読み上げ、警察官と警備員とともに一階に。この時、侵入から三十分近く経過していた。
一階の玄関前に男らはまだおり、悪態をついている。警察は「処罰を望むか」と聞く。おそらく撮影映像は動画サイトなどに悪用されそうだ。「画像を削除してほしい」などと伝えた。
二人は取り調べを受けるため、警察に同行した。残していった名刺によると、民族衣装を着て日本と産経新聞の非難をしていた男の名前はペク・ウンジョン。「ソウルの声」という「応懲(懲らしめを目的とする)メディア」を自称する団体の代表兼記者だという。どう見ても記者には見えなかったが、自分でそう言っているのだからそうなのだろう。年齢は「個人情報」を理由に警察も明らかにしていない。
もう一人のビデオ撮影をしていた〝カメラマン〟の男については全く不明だ。ペク・ウンジョンは警察でも、あれこれと文句を繰り返し、その様子をカメラマンが撮影し、仲間にメールで送っていたようだ。現にその様子は即座にネット上で動画として出ていたのだ。取り調べを受けたペク・ウンジョンはその日のうちに解放されたが、後日、書類送検されたという。カメラマンの方は、おとがめなしだ。
続きは「正論」10月号でお読みください。
■ なむら・たかひろ 昭和三十六年、兵庫県生まれ。関西学院大学法学部卒。産経新聞に入社し、平成八~九年、十三~十五年にソウル支局特派員、二十五年に同支局編集委員、二十八年から同支局長。