雑誌正論掲載論文
攻防・慰安婦 反日像が乱立 米・グレンデール市の市長を直撃!
2017年10月25日 03:00
麗澤大学客員教授 西岡力 月刊正論11月号
私は高橋史朗明星大学特別教授らと昨年10月に多くの心ある団体や個人のご支援を頂き「歴史認識問題研究会」を発足させた。そこで不当に貶められている祖国と祖先の名誉を回復するために、①基礎研究、②資料収集、③国際発信、④研究者育成を行うこととしている。
研究会として8月下旬、訪米調査を行った。米国で慰安婦に関する誹謗中傷が拡散しており、現地校に通う邦人子女がウソを教えられたり、その結果、精神的ダメージを受けたり、最悪の場合、友人からいじめを受けたりしているという報告を、高橋教授が多数、受けており、その実態を究明し対策を立てることが訪米の目的だった。その件については、別途、高橋教授などから報告してもらう。
実は、私はこの訪米調査の中で、カリフォルニア州のグレンデール市を訪問し、同市市長に慰安婦問題について説明する機会を得た。そこで私は、同市の慰安婦像が事実を歪めていて日米友好を損ねるものだということについて事実に基づいて語ることができた。それをきいた市長は、自分はこの問題で日韓どちらが正しいか「ジャッジになるつもりはない」と語った。本稿ではその経緯を報告する。
まず、グレンデール市の慰安婦像について概観しておく。今、米国内には11の慰安婦像・碑がある。像が4つ、碑が7つだ(像と碑がある場合は像として数えた)。それ以外に4つの設置計画がある。グレンデール市の慰安婦像は全米で5番目、2013年7月30日に設置された。ただし、それまでの4つはすべて碑だけの設置だったので、慰安婦像と碑文のセットでの設置は同市が全米で初めてとなる。また、公有地に設置されている像は2つ(サンフランシスコ市の像の展示スペースが市に寄贈されれば3つになる)、碑は5つだが、やはりグレンデール市の慰安婦像は公有地に設置された像としては最初のものだ。
●米国内の慰安婦像・碑設置および計画状況(2017年9月現在)
設置(予定)日 設置場所(※は公有地)
慰安婦像
1.2013年7月30日 カリフォルニア州グレンデール市(市有地の公園内)※
2.2014年8月16日 ミシガン州デトロイト市(サウスフィールド韓国人文化会館前庭)
3.2017年6月30日 ジョージア州ブルックヘブン市(公立「ブラックバーン2公園」内)※
4.2017年9月22日 カリフォルニア州サンフランシスコ市(中華街にあるセント・メリーズ公園)(私有地である公園の展示スペースに設置、展示スペースを市に贈呈することは決まっているが、時期は不明)
慰安婦碑
1.2010年10月23日 ニュージャージー州パリセイズ・パーク(公立図書館脇)※
2.2012年6月16日 ニューヨーク州ナッソー郡(アイゼンハワー公園内)※
3.2012年12月1日 カリフォルニア州(ガーデングローブのARガレリアショッピングモール前)
4.2013年3月8日 ニュージャージー州(ハッケンサックの裁判所脇)※
5.2014年5月30日 バージニアフェアファックス郡(郡庁敷地内)※
6.2014年8月4日 ニュージャージー州(ユニオンシティ・リバティプラザ市立公園)※
7.2017年7月19日 ニュージャージー州クリフサイドパーク(教会聖堂前の庭園)
建設計画
1.2017年中 慰安婦像 ニューヨーク州(ニューヨーク韓人会館内の韓人移民史博物館)
2.未定 慰安婦博物館 ワシントン(場所未定)
3.未定 慰安婦碑 ニュージャージー州フォートリー(市立公園内)
4.未定 慰安婦像 ジョージア州アトランタ市(場所未定)
私が訪れたグレンデール市の慰安婦像は市有地である公園内の市立図書館の向かいにある広場に設置されている。像は2011年12月、ソウルの日本大使館前に設置された像と同じものだが、ソウルにはない英語の碑文がついている。
碑文全訳は、以下の通りだ。
〈「私は日本軍の性奴隷でした」
掻き乱された髪は、日本帝国軍によって自宅から強制的に連れ去られている少女を象徴しています。
握りこぶしは、正義の回復のための堅い決意を表しています。
裸足でかかとの着いていない足は、冷たく無理解な世界によってずっと見捨てられていることを表しています。
少女の肩に止まった鳥は、私たちと亡くなった犠牲者との絆を象徴しています。
空いている椅子は、正義をいまだ証言していない高齢で死を迎えている生存者を象徴しています。
少女の影はその少女と年老いたお婆さんで、無言のまま費やされた時間の経過を象徴しています。
影の中の蝶は、犠牲者がある日彼らの謝罪を受け取って甦るかもしれないという希望を表現しています。
続きは正論11月号でお読みください
■ 西岡力氏 昭和31(1956)年、東京都生まれ。国際基督教大学卒。筑波大学大学院地域研究科東アジアコース修士課程修了。在ソウル日本大使館専門研究員などを歴任。「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)会長。著書に『金賢姫からの手紙』『よくわかる慰安婦問題』(ともに草思社)など多数。