雑誌正論掲載論文

スポンサーにNHKも名を連ねる 欧州の反日フリーペーパーはこんなにヒドい…

2017年07月15日 03:00

前衆議院議員 杉田水脈 月刊正論8月号

 4月と5月に大統領選挙の取材で出かけたフランスで、私のツイッターを見たパリ在住の女性から相談が寄せられました。早速お会いして話を伺うことになりました。彼女は30代。現地でフランス人と結婚し、仕事をしています。住み始めて15年になるそうです。社会保障の話なども詳しく伺ったのですが、私が最もびっくりしたのは彼女が持ってきてくれた一冊のフリーペーパーでした。

 この「ZOOM JAPON」という名のフリーペーパーは、2010年6月創刊。フランス語圏において、日本の文化的情報を総合的に発信する唯一の無料月刊誌とのことです。現在、フランス国内約850ヶ所に配布拠点があり、フランスを中心に毎月7万部、多い時には15万部も発行されています。英語、イタリア語、スペイン語にも翻訳され、ヨーロッパ中で配布され、Japan Expoや国際旅行博覧会の会場をはじめ、多種多様な日本関連イベント会場でも積極的に配布をされています。

 この一見、普通の日本の情報誌の内容が酷く偏っていたのです。

 2017年の2月号を見てみましょう。表紙には「(高倉)健さんで辿る北海道」などとあり、一見すると日本の観光特集のように見えます。が、その特集は後ろの方に数ページあるだけです。

 表紙をめくると赤字で「この号は少し危険な内容です」と書いてあります。そして次のページからは沖縄の反基地デモの大特集。それも、全国から集まった人々が平和的な行動を取っているのに、国は機動隊を大挙して繰り出し、暴力的に排除している、などと明らかにバイアスがかかった内容で4ページにわたり展開します。

 次の特集は日本会議です。さらに長いページ数(7ページ)を割いて特集しています。もちろんその内容は偏向そのもの。上智大学の中野晃一教授のインタビュー記事も長々と掲載していて、「日本に軍国主義を復活させるための団体」などと語らせています。

 どちらの特集も読んでいるだけで頭が痛くなる内容です。少し詳しく見ていきましょう。

●沖縄特集~沖縄の新しい戦い

 沖縄に米軍基地が存在するのは悪だという一方的な内容。基地反対運動をする人たちの言い分のみを取り上げています。

・沖縄は1972年までアメリカの統治下にあり、ベトナム戦争の基地としても使われ、 日本のアメリカ軍基地の75%がここにある。 アメリカ軍人総数は3万人。住民にとっては、違法な土地占拠であり、様々な犯罪や事故が70年間も続いている。これに対し安倍政権は「中国と北朝鮮の増加する脅威に備えて、軍備を増強している」と説明している。

・極右に操られたメディアは共産主義者が我々を金銭的に支援しているとするが、それは正しくない。暴力は使わない。我々は平和的デモで工事を遅らせているだけだ。

・年寄りの多いデモ隊は、平和と占領軍の撤退を叫ぶピケを掲げ、静かに活動する。それを破るように約100人の機動隊がバスで到着し、障害となるデモ隊の撤去にかかる。反抗するもの、反抗しないもの、また同じシーンが繰り返される。どちらの側も、証拠として保存するためにビデオをとっている。既に、沖縄での平和運動のリーダーの山城博治が逮捕されている。(記事掲載当時)

・基地反対運動は、日本人対日本人、 東京対沖縄の構図となる。独自の文化と言語を持つ沖縄は、歴史的に中国と関係があったことで差別を受けている。日本の降伏前、一家揃って自決するように帝国軍に仕向けられたという暗い過去があり、現在にも影を落とす。

・オスプレイの爆音が響く。20トンを運搬できるこの機体は、映画「地獄の黙示録」を彷彿させる。あまりに音がうるさく眠れない。政府に対し騒音に関する調査を依頼したが、反応がないので、大学関係者に調査を依頼した。結果は、オスプレイ1機で100デシベル、健康に悪影響を与えるレベルだ。

●日本会議特集~前世代の亡霊の政治的脅威

 この特集は、「日本会議の説明」「中野晃一上智大学教授のインタビュー」「菅野完氏が出版した書籍と裁判」「小林よしのり氏の過去と現在」の4つのパートに分かれています。日本会議を中心に日本が戦前に戻ろうとしていると非難する内容となっています。

 概要の部分では「20年前に設立された日本会議は、国内で最も影響力のある保守的な団体」と説明。“日本会議”という言葉に大きな意味はないが、ぞっとする恐ろしい団体だと書いてあります。

 その理由は圧力。多くの議員や有力者を抱える団体である一方で、その存在はあまり明らかになっていない。が、確実に組織の希望を超える結果を得るために、舞台裏で圧力をかける団体であるとやや抽象的に書いています。

 さらに、昨年あたりから日本会議に関する書籍が多く発行されていることに触れ、その代表作として、菅野完氏の「日本会議の研究」を取り上げています。同書が、ベストセラーとなった理由として、この本をめぐる日本会議側との裁判の話を持ち出しています。この裁判自体が日本会議の権力の実例で、国が表現の自由に脅威を及ぼすという菅野氏の理論を紹介しているのです。増加する保守ではない人々に対する国の圧力は脅威であると書かれています。国会議員や地方議員が加入する割合も丁寧に説明し、都市部よりも地方で「彼らはゆっくりと長期的には、民主主義を混乱させる力と影響力を構築している」としています。

 日本会議の主な目的の一つは、日本が以前の誇りを取り戻すための憲法改正であり、2015年11月、日本武道館で1万人以上を集め、憲法改正推進集会を成功させたことも写真入りで取り上げていますが、この集会にメッセージを送った安倍晋三総理、続いて閣僚として靖国神社に参拝した稲田朋美防衛大臣と日本会議の親密度についても触れます。

 中野晃一氏のインタビューにはさらに驚くべきことが書かれています。

続きは正論8月号でお読みください

■ 杉田水脈氏 昭和42(1967)年生まれ。鳥取大学農学部卒。日本維新の会から出馬し、衆議院議員を1期務めた。現在は取材、言論活動を行っており、著書多数。