雑誌正論掲載論文
拝啓 蓮舫さま 民進党は消費期限切れではないのですか?
2017年07月05日 03:00
経済評論家 上念司 月刊正論8月号
拝啓 蓮舫さま
民進党は終わっています。どこが終わっているかというと大きく分けて3つの点で終わっています。1つ目は政治の面、2つ目は経済の面、3つ目は人の面です。
今年に入ってから民進党は一連の「学園もの」を政治闘争の中心に据えて、朝日新聞などの「偏向メディア」とスクラムを組んで大キャンペーンを張っています。しかし、これが成功していません。安倍政権の支持率を一時的に下げることはできても、それ以上のことができない。国民が踊らないのです。大きな理由は、民進党の一連の「追及」が追及の体をなしていないという点にあります。
森友学園問題において、民進党は「8億円の値引きが安倍総理の意向を忖度したものだ」という線で大騒ぎしました。しかし実は隣の豊中市の野田中央公園が14億円も値引きされ、しかも、その問題に国交副大臣時代の辻元清美議員が関わっていることが報じられると、森友学園問題は静かになってしまいました。
そもそも森友学園の国有地払い下げ問題の真相というのは財務省の大ポカでしょう。隣の豊中市に問題の国有地を払い下げた際、産廃が埋まっていることが明らかになりました。ところが、隣接地で同じく産廃が埋まっている可能性が高い森友学園の土地は、あたかも産廃が埋まっていなかったかのような値段で売りに出されたのです。
手続きにも問題がありました。会計法には本来国有地の払い下げは原則入札、ただし緊急性があるものは随意契約でいいと書かれています。その例外規定は「予算決算及び会計令」という政令に書かれていますが、これはあくまで会計法という法律の例外で本来は入札が筋です。ところが、財務省には例外を使いまくって権限を拡大するという悪い癖があります。競争入札をせずに森友学園には随意契約で払い下げられてしまったのです。しかも、提示した価格は産廃が埋まっていないことを前提にした値段でした。後で産廃が埋まっていると知った籠池氏が怒るのも無理はありません。結局、産廃処理に見合った金額、8億円の値引きで財務省はこの問題を収めようとしたのです。普通に取材すれば誰でもたどり着ける結論でしょう。補助金受給などをめぐって彼に問題がないとは決していいませんが、偏向メディアの執拗さと安倍氏に非があるかのような姿勢には辟易しました。
加計学園も構造はよく似たところがあります。加計学園の獣医学部新設の認可について、前川喜平前事務次官は「総理のご意向」などで「行政がゆがめられた」などと言い、これを民進党が利用して政権批判をしていますが違法性のある話は出ていません。元経産省官僚で慶応大学教授の岸博幸氏は夕刊フジのインタビューに答えてこう証言しています。
「今、野党などは(朝日新聞が真っ先に報じた)『文書』や、前川氏の証言などを根拠に『加計学園』問題を追及しているが、一連の手続きに違法性はない。前川氏は、官邸の圧力で『行政がゆがめられた』と主張するが、文科省は獣医学部新設を認められない理由を十分に説明できず、交渉で負けたのだ。官邸を恨むのは筋違いだ」
また、前川氏の文科省時代の上司で元愛媛県知事として加計学園の獣医学部新設に尽力した前愛媛県知事・加戸守行氏は「獣医学部開設は悲願だった」として、こう証言しています。
「私が知事時代に一番苦労したのが公務員獣医師の確保でしたから、獣医学部の新設で、感染症対策、それから動物由来の薬の開発、ライフサイエンス等々、果たすべき役割が非常に大きいと、夢が一石二鳥三鳥でかないそうなときにこんな騒ぎが起きているので怒り心頭です」(日テレニュース24、2017年6月7日)
大学の新設は原則自由ですが文科省には申請を認可しないという権限があります。もし、文科省が加計学園の獣医学部設置を阻止したいなら、需要見通しが立たないことを方程式を書いて証明すればいいだけの話なのです。
ところが、文科省にはそれができませんでした。
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■ 上念司氏 昭和44年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。リフレ派の論客として経済政策、外交防衛政策など著書多数。テレビ、ラジオなどでも活躍中。