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不透明さを増す国際情勢をどう解釈すべきか、そして日本が進むべき方向性とは。第33回土光杯全日本青年弁論大会(フジサンケイグループ主催、積水ハウス特別協賛)が7日、東京・大手町のサンケイプラザホールで開かれ、若者たちが熱弁をふるった。大会テーマは「どうする?混沌の世界情勢」。今年から35歳まで参加資格が広がり、プレゼンテーション形式の弁論が初めて導入された今大会で、厳しい論文審査を勝ち抜いて本選に登場した弁士10人のなかから、最優秀賞の土光杯、優秀賞の産経新聞杯、フジテレビ杯、ニッポン放送杯に輝いた4人の主張の全文を紹介します。

最優秀賞土光杯 会社員 清水崇史さん(35) 「日本精神復活のために」(全文)

台湾教育の聖地、芝山巌学堂。日本統治が始まったわずか3カ月後の1895年7月から7人の教師がこの地で、教育を始めていきました。しかし、当時の台湾は治安が大変悪く、翌年元日に約100名の抗日ゲリラに襲われ、その内6名は命を落とします。

そのような事件が起これば「そんな野蛮な場所に行くのは嫌だ」と思うのが通常の感覚です。しかし、その後多くの日本人教師が「そんなに野蛮な場所ならば教育が必要だ。私が行きます」と台湾行きを志願したのです。その後も多くの先人達が現地に寄り添い、台湾の発展のために懸命に努力しました。

台湾には、現在でも「日本精神があるわね」という褒め言葉があるそうです。「勤勉である」「正直である」「約束を守る」「優しい」等、良いことをしたときに用いられる言葉です。つまり、日本精神というのは「自分のためではなく相手のために尽くすことが出来る」という精神なのです。先人たちの日本精神が現在の親日台湾の礎を築いたと言えるのではないでしょうか。

先の大戦においても、アジアの自主独立を目的に、先人達は血と汗を流しました。

アメリカ、イギリスといった大国と戦争中にも関わらず、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、インドなど、長年植民地支配されていた各国を解放し、教育を施していったのです。まさに、相手のためを思う日本精神が、アジアの自主独立のきっかけとなったのです。

混沌の世界情勢。これは世界中の国が、個人が、自国の利益、自分の利益ばかりを考えた結果起こっています。ほとんどの国は自国の利益しか考えません。しかし、日本だけは違いました。自国だけの為では無く、世界の平和を真に考えていたのです。それは、明治天皇の御製からもわかります。

「よもの海 みなはらからと思ふ世に など波風の たちさわぐらむ」

「世界はみな同胞であるのに、なぜ争いを起こすのであろうか。」この平和を願う思いが、日本精神に宿っているからなのです。

しかし、その状況は変わってきてしまいました。

台湾の李登輝元総統は、22歳まで日本人として生き、日本精神を礎に台湾を民主化へと導いた偉大な指導者です。李登輝元総統は、「日本精神は世界の危機状態を乗り切っていくために、絶対必要不可欠な精神的指針である。しかし、1945年以後、日本精神が全否定され、日本の過去はすべて間違っていたという『自己否定』へと暴走していった」と述べられるのです。

この言葉の通り、日本人は日本精神を失いかけています。

日本人としての自信を失い、『日本は悪かった』と自己否定に夢中です。そして、ニュースを見ていても、自分勝手な日本人の話をよく耳にします。

私は、日本人が日本精神を忘れてしまった理由は、先人達の想い伝えないことにあると考えます。立派な先人達の話を聞けば、「自分も立派にいきよう」と思うでしょう。しかし、知らなければそう思わないのは仕方ないでしょう。

私自身も、20代半ばまでは歴史を知らず、日本に興味を持たず、世界に目を向けず、自分の事ばかりを考える人間でした。しかし、縁があって真実を知り、目を覚ます事が出来たのです。

多くの日本人は、歴史を知りません。知ろうともしていません。ならば、知っている人間が先人の志を受け継ぐことは、次の世代に伝えることは、義務なのではありませんか?

日本精神復活のために。

私は、民間レベルで出来る活動として、二宮尊徳、後藤新平、吉田松陰そして特攻隊員など、日本精神をもった偉人たちを若者に伝えています。昨年は小学5,6年生に向けて二宮尊徳のお話をする機会をいただきました。その結果、後に「二宮尊徳かっこいい!」と「尊徳ブーム」が起きたのです。今まで何があっても人のせいにしてばかりいた少年が、「人のせいにするなよ」と言うようになったという嬉しい話を聞きました。たった45分の授業でも、若者達は立派な先人に触れたら「あんな格好よく生きたい」と考えるのだなあと実感することが出来ました。

私にできる事は汗をかいて目の前の一人一人に伝えることだけです。しかし、話を聞いた人が一人でも「日本が好きになった」「もっと学びたい」「私も伝えていきたい」と思えばそれが連鎖していきます。「一燈照隅万燈照国」という言葉があります。自分が灯せる火は小さく、照らせるのは片隅だけだけど、その火が次につながればいつかは国を照らす事が出来る。これこそが、日本精神の復活、そして世界平和へ貢献できる日本の復活へとつながっていくと信じて、私はこれからも偉人を通じて日本精神を伝えていきます。

清水崇史さん

 

優秀賞産経新聞社杯 松下政経塾 佐野裕太さん(30) 「日本を飛び出して、世界で日本を発信しよう」(全文)

昨年の夏、私はワシントンDCにいました。ワシントンDCには多くの研究機関があり、政治に関する様々なシンポジウムが頻繁に開催されています。

ある研究機関で開かれた、アジアの問題を議論するシンポジウムに参加した時、私は強い危機感を覚えました。日本を語る場に、日本人があまりに少ない。

会場の半数近くは、アジア系です。観客席からは、中国語や韓国語が聞こえてきます。しかし、日本人らしき人の姿はわずかです。パネルディスカッションのモデレーターを務めたのは、中国人でした。登壇しているスピーカーの国籍も様々ですが、そこに日本人の姿はありません。議論が日本に直接関わるテーマになっても、それを語るのは日本人以外です。日本が誤解されているシーンも何度かありました。でも、その誤解を訂正する日本人はいません。

世界中の大使館やメディアが集結するワシントンDCで行われる議論は、そのまま世界各国に広がっていきます。日本に関する誤った理解が世界中に拡散しかねない光景を、あの日、私は目の当たりにしました。

今、国際社会は、それぞれの国が、軍事力や経済力のみを競う時代から、国のイメージも競う時代へと変化しています。日本の周りには、日本の何倍ものお金や人を使って、自分たちの正しさを主張している国々があります。日本では昔から「言わぬが花」という言葉がありますが、国際社会では通用しません。日本も、好ましい国際世論を形成するため、国際社会への訴えかけを、より積極的に行っていかなければなりません。

その中でも、歴史認識問題は、特に重要なテーマです。この問題は、かつては、日本と中国、日本と韓国といった2つの国の間で争われていました。しかし、近年では、アメリカをはじめとする第三国を舞台に、国際社会を巻き込んで争われるようになっています。世界各地に慰安婦像が設置されていく背景には、それを許容する国際世論の存在があります。世界の中で生きる日本にとってまさに喫緊の課題です。

世界から日本を正しく理解してもらうためには何が必要なのか。私は、アメリカで発信力を持つ日本人を増やすべきだと思っています。世界中の人々が集まるアメリカから、日本の立場や考え方を発信することが重要です。その役割を担うことのできる日本人が必要です。

では、アメリカで発信力を持つ日本人を増やすためには何が必要なのか。アメリカに留学する日本人を増やせばいいという意見がありますが、それだけでは不十分です。アメリカで学ぶ日本人留学生の数は世界全体で8位。決して少ないわけではありません。しかし、日本人留学生の多くは、省庁や企業からの派遣です。2年前後の留学後は帰国します。現地に根を下ろすことはわずかです。組織の後ろ盾なくアメリカに留学し、卒業後、アメリカでの就職をめざす他のアジア諸国の留学生とは大きく異なります。

私たちに必要なのは、アメリカから世界に日本を発信するのだという志を強く持ち、5年・10年といった長期でアメリカに滞在し、現地社会と深い人間関係を持つ。そういう日本人を増やすことです。

そう思ったとき、私はアメリカに渡ることを決意しました。アメリカで教育を受け、アメリカで発信力を持つ研究者として活動していこう。アジアが抱える問題とそれに対する日本の立場をアメリカから世界へ発信していこう。私が愛するこの国が、世界から正しく理解されるために、自分の人生を使っていこう。その思いを実現させるため、2017年、今年、私は日本を離れ、アメリカに旅立ちます。

私は、1人でも多くの日本人が、海外に飛び出して、日本のことを世界に伝えてほしいと思います。日本から離れたくない気持ちは、私も同じです。でも、日本人に生まれてよかったと思うのであれば、この国が世界から正しく理解されるための努力を怠るべきではありません。

さあ、皆さん、一緒に日本を飛び出しましょう。世界で日本を発信しましょう。そして、混沌の世界情勢の中で、日本が生き抜いていくために、皆さん1人1人の力を、この広い世界で生かしていきましょう。御清聴、ありがとうございました。

佐野裕太さん

 

優秀賞フジテレビ杯 同志社大経済学部2年 野崎英子さん(21) 「『地の塩、世の光』たらん」(全文)

樹静かならんと欲すれど風やまず。現在の世界情勢を眺めるとき「風樹の嘆」といわれる嘆きを感じずにはいられません。いくら世界の平和、日本の安寧を希求しようとも、力による現状変更を求める国が存在し、国家ではない組織が国際テロを実行するという混沌とした世界情勢の中で、ただ嘆くのではなく、世界の平和と安定のために日本が果たすべき役割を考えてみたいと思います。

私は、世界の平和と安定のため日本が傍観者ではなく責任ある当事者として一翼を担えると考えます。日本人には洋の東西を問わず共感を得ることのできる「普遍的」価値観を提示する風土があります。リオデジャネイロ・オリンピックの閉会式での演出はその一端を垣間見せました。沢山のアニメの主人公とともに安倍総理大臣自らがマリオに扮し、ドラえもんの助けを借りて地球の裏側に現れるサプライズ演出は世界に「日本の普遍性」を感じさせるに十分な演出でした。つまり、日本人が描くキャラクターは、老若男女、国境もこえて愛される存在ということです。このような日本の普遍性の提示は、世界を導くことができると考えます。

私がこの原稿を作っていた当時は、アメリカ大統領選挙が佳境を迎えておりました。アメリカ・ファーストを標榜して国民の心を掴むトランプ現象は、一瞬の激情に陶酔した状態のように感じられました。その背景にある偏狭で排他的な価値観の結末は、世界を不安定にする要因となるでしょう。これに対して日本は、ラグビーワールドカップで見せたジャパン・ウエーという価値観を対立軸として提示できると思います。ハードワークを厭わず、個々の体格や身体能力の不利を勇気と献身で補い、自分の果たすべき役割を自覚して、組織としてプレーする正々堂々とした姿は、世界に驚きと感銘を与えました。このジャパン・ウエーこそが世界が価値観を共有し、平和と安定を築くための礎となると思います。

一方で「国際会議を成功させるにはインド人を黙らせて日本人を話させること」というジョークがあるほど日本人は自己主張が苦手です。いくら優れた価値観を持っていても理解されなければ世界に貢献できません。私がアメリカに1年間留学していたホストファミリーですら日本と中国、韓国の区別がついておらずとても落胆しました。また昨年7月、親日国といわれるバングラディシュで日本人7名が亡くなったダッカ・レストラン襲撃事件では「私は日本人だ、撃たないで」と訴えたにも関わらず、尊い命を奪われたことは衝撃的でした。世界の人々は、想像以上に日本のことを知らず、また日本人も世界の現実を認識していないと強く感じました。

私は、日本が世界の平和と安定のために責任ある当事者となるためには「守るべき伝統を守り、変わるべき変化に対応する。」ことが大切だと思います。

守るべき伝統とは、「忠誠と名誉を重んじ、力なき人の味方となり、卑怯を恥とする」価値観です。今で言うジャパン・ウエーであり伝統的表現ならば「武士道」という言葉で表される日本の誇るべき伝統です。ナンバーワンでもオンリーワンでもない、どんな時もお天道様に恥じない行動をとる価値観です。この価値観の普及は、共存共栄して世界を安定させるワールド・ウエーとなるでしょう。

変わるべき変化への対応については二つあると思います。まず一つ目は、世界は「沈黙は金」とは決して認識しないということです。発言しないことは、相手の主張をそのまま認めたことになります。少なくとも1人1人が日本を代表しているとの矜持を持って、正々堂々と意見を述べることを実践する必要があります。

変わるべき二つ目として、「目の前にある世界の現実に向かい合うこと」です。世界には未だに人道が拒否され、平和が無視される状態が現実に起こっています。しかし日本では平和の努力を怠り、準備が無益であることが「平和の福音」のごとく信じられています。国家の平和と独立が無為と安易のなかでは決して維持されないこと。これを維持するためには激しい努力が必要であること。そして「今日の平和」が思いもしない時に思わぬ形で「明日の混乱」となることは広く人類が経験してきたところです。私は、日本が平和を愛する点において、他のどの国にも劣らないことを自負しておりますが、混乱を防止する努力と準備こそが世界の平和と安定を維持するため唯一最善のものであることを改めて強調したいと思います。そして世界の現実に向きあってこそ責任ある当事者となり、更には平和の使者として貢献できるものと考えます。

私が学ぶ同志社大学の建学の精神に「地の塩、世の光」という聖書の言葉があります。塩の清めの如く世界を正しくし、灯火が暗闇を照らすように、日本が世界を導いていくことができるよう私自身、責任ある当事者として努力していきたいと思います。

野崎英子さん

 

優秀賞ニッポン放送杯 弁護士 大江弘之(29) 「ICT技術と分断の時代の安全保障」(全文)

平成29年、酉年。「酉」にちなんで、優れたものを「取り入れる」と良い年と言われます。さて、この激動の国際情勢のなか、日本は、何を「取り入れる」べきなのでしょうか。それは技術であると私は考えます。ただの技術ではありません、ICT、すなわち情報通信技術です。

私のかけているこのメガネは、ただの度の強いメガネですが、メガネで世界中の情報を見渡せるようにしようとする企業があります。そして、この私の付けている時計、これは祖父の形見ですが、時計に世界中の情報にアクセスする機能をつけようとする企業があります。

これらの機能のポイントは、世界中の情報を繋げる点にあります。情報を通信するという点を指して情報通信技術(Information Communication Technology、ICT)というのです。

ICTは、単なる便利な技術ではありません。かつての技術といえば、家電やワープロのように、私たちの作業を補助するものでした。しかし、いまやコンピューター自身が世界中の情報を収集し、分析し、私たちは、何が世界で起きているのかを知ることができます。そして世界中の人が世界中へ情報を発信する者となれるのです。

さて、21世紀は一体どういう時代なのでしょうか。ICTは、社会の姿を変える可能性を秘めています。Googleの会長であるエリック・シュミット氏はICTによってつながる世界では、世界中の個人が世界を動かす権力を握るかもしれないと述べ、立法、行政、司法そしてマスコミに続く権力、すなわち「第五の権力」が登場すると論じました。

さらに、私がここで皆様に強調したいのは、ICTはリアルタイムに世界中をつなぐ技術であるという点です。ここに世界中が一つに繋がった新しい空間が登場したのです。陸、海、空、宇宙に続く「第五の空間」(サイバー空間)と名付け、各国の軍隊はこの第五の空間(戦場)での戦力を備え始めています。我が国の自衛隊にもサイバー防衛隊という部隊があります。

皆さん。ここで私は、こう問いかけたい。「世界が一つに繋がるからといって、日本に安寧は訪れるのでしょうか。そして私たちは幸福になるのでしょうか」と。私ならばこう答えます。「分かりません。それは私たち次第でしょう。」と。いつの世も、国の安寧は今を生きる国民達の努力によって実現されるものであり、幸せは今を生きる人々の努力によって感じるものです。

ICTが誕生しても、道理は変わりません。むしろ、世界が繋がることによって、文化・文明の違いが際立ち、また、世界は揺らぐようになりました。この世界の揺らぎにもICTは大きな力を発揮しているのです。

平成22年の中東に起きた「アラブの春」を皆さんは覚えているでしょうか。ここではFacebookが情報源となり、また連絡手段となったのです。人々はICTを生かして、彼らの信じる道を進みました。昨年のイギリスでの国民投票、アメリカ大統領選挙でもICTが活かされました。

彼らの行動を「排外主義」「過激」だと嘆くのも頷けます。昨年も痛ましい事件が多々ありました。ただし、彼らは単なる暴徒ではありません。自らの思想を信じ、信じるからこそ行動に及んでいるのです。そして、彼らの行動はICTの発達によって、益々現実化したのだといえるでしょう。技術は誰もが使えるものです。個人であっても権力を持ちうる時代、国家が組みすべき相手はもはや国家だけではありません。世界は一つに繋がることでむしろどこからでも分断する時代を迎えたといってもよいでしょう。

彼らの行動を「過激」だと非難している場合ではありません。この激動の国際社会を生き抜くために何をなすべきかを考えることこそが重要ではないでしょうか。かの歴史学者であるアーノルド・J・トインビーは、「歴史を忘れた民族は滅ぶ」と論じました。そうです、私たちの日本の行く末は、私たちの双肩にかかっているのです。

では、我が国はこれからどうすべきなのでしょうか。私は、この21世紀の社会を形作るかもしれないICTを「取り入れる」ことが鍵になると思います。私は、ICTを「取り入れる」にあたって、皆さまに訴えたいことが三つあります。

一つ目は、ICTを何のために取り入れるのかをはっきりさせることです。それは、我が国を守るためです。もっとも、我が国にとって脅威となるのは国だけではありません。情報セキュリティの整備、サイバー空間における防衛体制の整備などを通して国だけでなくあらゆる脅威から守るために我が国の国防力を強化すべきです。産経新聞の元旦の記事において、「防衛省が敵のレーダーや通信を妨害する電子戦の強化に向け、新たな電子戦評価システムの運用開発に取り組んでいる」との報道がなされましたが、このような政策をもっと進めるべきです。

二つ目は、ICTの研究開発環境についてです。ICTは、インターネットのように私たちの社会の形を変えるような技術です。このような技術には、その技術を成り立たせる基礎研究があるのです。製品開発などではなく、根本的な仕組みや理を研究することです。昨年ノーベル賞を受賞された大隅教授も基礎研究の重要性を述べておられましたが、この基礎研究を行える環境を国として整備していくべきです。

参考としてアメリカの事例をご紹介したい。アメリカには、国防高等研究計画局(DAPRA)と呼ばれる軍事技術の研究のための組織があります。「安全保障のための革新的技術における重要な投資を行うこと」をミッションとし、日夜基礎研究への投資を惜しまず行っています。インターネットやGPSといったICTの要の技術は彼らの努力によって生み出されました。彼らの組織を大いに見習うべきでしょう。

では、そもそもなぜDAPRAは、基礎研究への投資、そしてICTの発展に貢献しえたのでしょうか。その理由こそ私が三つ目に訴えたいことです。DAPRAの長官であった、レジーナ.E.ダガン氏は、「世界を変えるのは,一見馬鹿げたアイデアだと思われるようなことを追求し、キャリアを危険にさらすことをあまり恐れないリーダーの存在である」と語ります。そして、DAPRAにいる者の心には、国への奉仕・輝かしい組織のために働くという栄誉の心があるといいます。このダガン氏が語るようなリーダー、新しいことに果敢に挑戦するリーダーの存在、これが私が最後に訴えたいことであります。

さて、皆さま、ここで思い起こして頂きたい。私たち日本人は、幾度となく異国の脅威を受けながらも生き抜いてきたということを。押し寄せる元寇から我が国を守ったのも、迫りくる西欧諸国を前に時に鎖国を行い、そして時に富国強兵を図って我が国の独立を保ったのも、私たちの先人達の気概と努力によるものです。皇紀2677年の歴史は先人たちが一つ一つ糸を紡いできたものです。

今こそ、この激動の国際情勢の中、私たちがこの歴史の糸を紡ぐ人になろうではありませんか。私たちが「既存のキャリアを危険にさらすことをおそれず、国への奉仕と栄誉の心を持ったリーダー」になろうではありませんか。そして国民が一致団結してこの激動の時代を乗り越えようではありませんか。しかし、素手でミサイルを打ち落とすことはできません。この21世紀、我が国を守り抜くため、ICTという次の社会を形作る技術の獲得へ向け、我が国は一致団結して進むべきです。

さて、皆さん。最後にお伝えしたいことがあります。この演説は私一人で完成したものではありません。明日の日本を支えようという志のある仲間と議論を重ね、作り上げたものです。今日も仲間がたくさん来てくれました。これからも仲間の英知を結集して、明日の日本を支えるために自らを鍛えていきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

大江弘之さん

入賞者以外の出場者は登壇順に以下の通り。

公務員・清水麻未▽立命館大・小野寺崇良▽拓殖大・山田誠晃▽防衛大・北尻雄樹▽松下政経塾・小野寺栄▽慶應義塾大・米澤雛子=敬称略