雑誌正論掲載論文

「尖閣防衛の最前線」国境の島で見たこと、考えたこと

2012年07月26日 03:00

 船酔いの果てたどり着いた尖閣海峡は見事に豊かな漁場だった。一刻も早く避難港と待避施設を整備すべきだ (参議院議員・西田昌司 月刊正論8月号

 ■にしだ・しょうじ 昭和33(1958)年、京都市生まれ。滋賀大学経済学部卒。税理士、京都府議5期を経て、平成19年、参議院選挙(京都府選挙区)で当選。若い頃から『発言者』などで活発に言論活動を行う。著書に『政論-保守の原点を問う』『政論Ⅱ1-政治の原点を問う』、共著に『保守誕生-日本を陥没から救え』。

漁師見習いとして

 ――石垣島から尖閣まで片道九時間、船酔いがきつかったそうですね。

 西田 大変でした。甲板のほうが楽じゃないかと思って出ていたのですが、波しぶきはかかるわ、雨は降ってくるわで、体中ずぶ濡れになってしまいました。一度ずぶ濡れになるとキャビンの中に入れないんですよ。クーラーが効いていて風邪をひいてしまうから。結局、往復18時間ずっと甲板にいることになってしまいました。うつらうつらというか、半分気を失いかけた状態でした、恥ずかしながら。石垣島に帰港する2時間ぐらい前に波がおさまり、やっとお腹が減っていることに気がつくという有様。おにぎりを食べ、それでようやく血の気が戻ってきたという感じでした。体質にもよるのでしょうが、厳しかったですね。

 ――陸に上がってすぐに記者会見を開かれましたよね。ビデオで見るかぎり、その時はシャンとしているようにお見受けしましたが。

 西田 帰港の2時間ぐらい前になって、「ようやくこれで陸に上がれる」という安心感に包まれ、さらに西表島と石垣島の間の島陰に入って波が緩やかになった。だから1時間前にはずいぶんシャンとしてきました。

 ――今回の視察は、チャンネル桜の水島総代表の誘いに応じたという形ですね。

 西田 そうです。水島さんに「この週末に行くんですよ。西田さんも行きませんか」と誘われました。予定表を見ると調整すれば可能だったので、「じゃあ、行きましょう」ということになった。日本が尖閣を実効支配していることを世界に示すためにも、国会議員は尖閣を訪問すべきだと、かねてから考えていましたから、渡りに船という形でした。

 私にしてみれば予想以上に大変な旅でしたが、水島さんたちに聞くと「8回行ったけれど、今回が一番ましなほうじゃないか」と言われました。われわれ国会議員は比較的大きな、といっても10トン未満の漁船に乗せてもらいましたが、それでもひどい船酔いに襲われました。他の方々は半分ぐらいの大きさの漁船で行かれていますからね。私は本当にその方々の勇気に敬意を表したいですね。

 ――そう考えると、日本青年社の人たちが尖閣に灯台を造ったというのは、命懸けだったと言えますね。

 西田 その通りです。よくあそこまで機材を運んだものだと思います。海の上では何が起こるかわかりませんから。実際に今回は、船団の1隻がエンジントラブルに見舞われ、他の船に曳航されることになりました。われわれの船団の周りでは、海保の巡視艇が国境警備をしていました。漁船と比べると桁違いの大きさです。この存在は、われわれに安心感を与えてくれました。ただ、本来ならば国会議員が海保の船で視察すべきなんです。ところが政府自身が調査活動を含めて主権を行使するのを禁じている。だから、われわれは国会議員としてではなく、漁師見習いという立場で参加したんですよ。

 ――国会議員が自国の領土を視察するというのに、漁師見習いという立場ですか。奇妙というか滑稽というか。そんなことだから、中国は領土的野心を膨らませるのでしょう。

 西田 日本という国は他国とトラブルが起こると、事を荒立てない方向に走ります。尖閣の場合は、「日本人も上陸させないから、中国人も上陸は控えてくれ」という収め方を自民党政権がしてしまった。主権に関わることですから強く主張すべきだったのに、それができず、中国に付け入る隙を与えてしまった。自民党議員としては忸怩たる思いです。そして民主党政権になり、これをチャンスと見た中国は領土的野心を隠すことなく、これまで以上に尖閣に対する圧力を強め始めた。民主党政権はそれにまったく対応ができていません。海保の巡視艇に体当たりした中国船の船長を逮捕しながら釈放するという、主権国家としてあるまじき対応を取って平然としている。

 ――そういう弱腰の対応に対する国民の怒りが、東京都の尖閣諸島購入募金に向けられているわけですよね。

 西田 その通りです。

豊かな漁場-まず避難港の建設を

 ――尖閣の海域では、台湾の漁船と遭遇されたそうですね。

 西田 夜中に尖閣へ向かっていると、漁火が見えるんです。水島さんたちは「台湾の船だ」と言い、われわれの船が近づいていくと逃げていきました。海保の巡視艇がわれわれの船と併走していましたから、その船は海保に気付いて逃げ出したのでしょう。尖閣から石垣に帰る途中にも遭遇しました。われわれの船の数倍もある大きな船でした。船体に描かれている漢字が旧字だったので台湾の船だと思います。悠々と大きなマグロを釣り上げていましたよ。この時は、海保の巡視艇は離れて見えなかったのかもしれません。

 台湾との間には残念ながら国交がありません。それゆえ日台漁業協定もありませんから、排他的経済水域で台湾の船が操業することは本来できません。一方、日中間には漁業協定が結ばれており、中国漁船の操業は可能になっています。一昨年の体当たり事件は、島から12海里以内、つまり日本の領海に中国船が入り込み、これを海保が追い出しにかかって起きたわけです。

 漁師さんたちに聞きますと、この海域では中国船、台湾船がしょっちゅう大船団でやってきて大がかりな漁をするそうです。そのさい、日本の延縄が切られるなど、大きな被害が出ている。日本の排他的経済水域なんですから、安心して漁ができるように監視体制をしっかりしてほしいというのがみなさんの願いであると聞かされました。続きは月刊正論8月号でお読みください