雑誌正論掲載論文

お粗末!ニコン「慰安婦」写真展騒動を嗤う

2012年08月06日 03:00

 有楽町駅前の電気ビルにある外国人特派員協会(外国人記者クラブ)。来日した海外の有名人や日本政界の要人、スポーツ選手話題の人などがクラブ側の要請で会見し、その内容は全世界に発信される。世界に向けた日本の・窓・ともいえる場所なのだが、一定の条件さえ満たせば誰でも、どんな団体でも、記者会見や会合を開くことができる。そのため、しばしば反日団体などによる海外向けプロパガンダの舞台にもなってきた。(ジャーナリスト・大高未貴 月刊正論9月号

反日の“茶番”再び

 2007(平成19)年6月、アメリカ下院の外交委員会は「従軍慰安婦」を巡る日本非難の決議案を可決した。その2カ月前の4月17日、この決議案を日本国内から強力に後押しする記者会見が同クラブで開催された。「慰安婦強制連行を示す尋問調書が確認された」という趣旨で、中心になって会見したのは林博史・関東学院大教授。会見の2日前に朝日新聞が「慰安婦強制示す調書 東京裁判に各国検察提出 研究者確認』という見出しで、「重大な資料が新たに発見されたのだ」と思わせる扇情的な記事を掲載したこともあって、多くの外国人記者も集まっていた。

 これには前段があった。その1カ月前、米下院に決議案が提出される事態に対し、当時の安倍晋三首相が国会で「官憲が家に押し入って連れてゆくというような狭義の強制性はなかった」「決議案には事実誤認があり、通っても、(日本政府として)謝罪するつもりはない」と答弁していた。反日勢力は、海外世論に訴え、安倍首相発言を無効にしようと謀ったのである。

 会見場では大量の資料が配布されたものの、東京裁判で散々議論された挙げ句に疑問の付されたものや、軍規違反として日本軍の軍法会議で加害者が処刑された事件の関連のものなど、研究者の間では知られていたものばかりだった。「『軍の関与』の証拠」と喧伝されたものの、「内容を曲解していて証拠にはならない」との反論や批判を浴びたものもあった。慰安婦「強制連行」を証明する新資料は何一つなかったのだ。一部の外国人記者からは「どの資料が新発見で、どの資料が既発表のものなのか?」という疑問も呈された。

 とはいえ外国人記者の多くは、慰安婦問題の詳細など知るはずもない。ただ「セックス・スレイブ(性奴隷)」というおどろおどろしい言葉だけが一人歩きして、海外に打電されたのだった。

 前置きが長くなったが、この6月28日、同クラブを舞台に、同じような茶番が演じられた。会見したのは、安世鴻という韓国人写真家だ。安氏は、カメラメーカーのニコンが運営するイベントスペース「新宿ニコンサロン」で、元「従軍慰安婦」をテーマとした写真展の開催を計画。「反日プロパガンダだ」と抗議が集まる中、ニコンが5月22日に開催中止を安氏に通告すると、安氏は東京地裁に、「ニコンは契約に基づき会場を貸さなければならない」と仮処分を申請。6月22日に地裁がこれを認める決定をし、開催にこぎつけていた。

 集まった記者は約30人。登場したのは司会者、安氏、通訳、JVJ(ジャパン・ビジュアル・ジャーナリスト協会)の豊田直巳氏。安氏は「日本のような民主主義国において表現の自由が弾圧されたことを遺憾に思う。トラブルが起きてからというもの、会場には数人の警備員が配備され、モノモノしい雰囲気になってしまった」などと言い、スライドで会場の様子を映してみせた。更に「ネット上に私(安)のメールや電話が公開され、自宅にも脅迫メールや電話が殺到する嫌がらせを受けている」と訴えた。

 質疑で、白人記者から「何故このテーマを選んだのか?」と質問されると、安氏は「1996年に初めて慰安婦に会って心を動かされ、何度も彼女達のところに通ううちに写真を撮るようになった」とした。「こんなに物議をかもしているのに何故続けるのか?」という質問には、「表現の自由を守るため一芸術家として戦う。『従軍慰安婦』問題は日本でタブー視されているのでそれらを風化させないよう活動している」と答えた。

 多分、これが彼の本音なのだろう。つまり写真家ではなく活動家なのだ。安氏は、ソウルの日本大使館前に慰安婦像を設置した「韓国挺身隊問題対策協議会」の連携団体で、慰安婦博物館の建設に協力した「韓国挺身隊研究所」で活動している。

 私も手をあげ質問した。「慰安婦達が日本軍によって強制連行されたという証拠は、いまだに韓国政府からですら提出されていない。彼女達は当時公認されていた売春婦ではないのか?」。安氏は「慰安婦は戦争の前線などに工場で働くなどと騙されて送られた。実際に現地に連行されたら日本兵の性奴隷の脅迫から逃れることはできなかった。証拠がないから、彼女達が慰安婦の契約書を持っていなかったからといって慰安婦でないと断定することはできない。彼女達はサラリーももらっていなかったのだから」。

 この回答に、別の日本人記者が噛みついた。「ここに、彼女達が高い賃金を貰っていた資料や、韓国人の名で女性を集めた広告などがあります。こういった資料があっても強制連行だと言い切れますか?」。この記者は資料を外国人記者たちに見せて説明しようとしたが、一部の記者達から「黙れ!」と何度もヤジが飛んだ。これも「表現の自由」の弾圧だと思えたが、誰も文句を言わない。しかも安氏は「私は学者ではなく写真家です」と逃げた。

 また、朝日新聞の記者が質問したのだが、ほかの誰もが英語で話したにもかかわらず、韓国語で喋るので何を言っているのかさっぱり分からなかった。他の記者たちに知られたら困るとでもいうのだろうか。

写真展中止決定の隠れた理由

 会見の翌日、朝日新聞にはこんな社説が掲載された。「今回の写真展をめぐっては、ネット上に『売国行為』といった批判が飛びかい、ニコンにも抗議が寄せられたという。(中略)写真の発表をふくむ表現・言論の自由が保障されているからこそ、人々は考えを互いに交換し、賛同者を増やしたり、逆に自分の誤りに気づくきっかけを得たりする。その土壌のうえに民主主義は成立する。ところが最近は、ネット空間の言論をはじめとして、異なる考えを認めず、過激な批判を浴びせ、萎縮させる動きがさかんだ。(略)そうして息苦しくなった世の中はどこへゆくのか。歴史の教訓に思いをいたすべきだ」

 よくもしらじらしく、「自分の誤りに気づくきっかけを得たりする」とご高説を垂れたものである。続きは月刊正論9月号でお読みください

 ■大高未貴氏 昭和44(1969)年、東京都出身。フェリス女学院大学卒業。世界100カ国以上を訪れ、ダライ・ラマ14世、PLOのアラファト議長にインタビューする。衛星放送チャンネル桜キャスター。著書に『魔都の封印を解け!』(防衛弘済会)など。