雑誌正論掲載論文

中国の亡命外交官が明かした衝撃の事実

2017年03月25日 03:00

AJCN代表 山岡鉄秀 月刊正論4月号

 去る2月5日、ホテルチェーンのアパ(APA)ホテルが南京大虐殺などを否定するオーナー、元谷外志雄の著作を客室に置いているとして中国政府が反発している問題で、日本在住の中国人約100人が東京都新宿区の同ホテル周辺で抗議デモを行った。一部のネットニュースでは「いかなる政府当局の後ろ盾もない住民による自発的で民主的なデモだった」と伝えられているが、私個人はこれを信じていない。

 理由はふたつある。まず、すでに足かけ三年間もシドニーで慰安婦像阻止活動をリードしている経験を踏まえれば、この手の活動に工作員が介在していないケースなど非常に考えにくいからである。 

 2014年4月から2015年8月まで戦った豪州・ストラスフィールド市のケースでは、中国側から韓国側に声をかけて共闘するスタイルだったが、背後に両国政府が介在していることが明らかだった。現地の韓国系住民からも、北米から工作員が潜入していたことを確認している。 

 中国系は現地で買収した会社を拠点としていた。現在進行中の教会の敷地(私有地)に置かれた慰安婦像を巡る問題は、韓国の挺身隊問題対策協議会(挺対協)という、北朝鮮と密接な関係が指摘される政治活動団体の主導で行われている。現地の在住者が突然自発的に行動を起こすことはほぼないと言ってよい。そもそも、中国は一民間企業のアパホテルの言論の自由を無視し、政府観光局が旅行会社に「アパホテルを使うな」と命令するお国柄である。デモだけが民間人によって自然発生的に起こったと考える方が不自然だし、ナイーブすぎるのである。

 もうひとつの理由は、本論文の主題でもある、亡命中国人外交官の告発である。彼の告発は、豪州、米国、日本といった自由主義国に、いかに中国のスパイと工作員が広く深く潜入しているかを教えてくれた。そして、日本に対しては一貫して歴史問題で攻撃し続ける方針が貫かれていることも確認された。

 今回、在住中国人のデモでみられたソフトなアプローチや、あたかも民間人が自然発生的に行ったと報じるネットニュースは、むしろ、その内実を覆い隠しているのではないだろうか。

 2005年5月、シドニーの中国総領事館を離れ、妻子と共に豪州政府に政治亡命を求めた外交官がいた。名前を陳用林という。豪州政府の当初の反応は温かいものではなかった。中国の資源爆買いに依存を強める豪州は、中国政府の機嫌を損ねたくなかったからだ。しかし、陳はメディアの注目を集め、保護ビザを獲得することに成功した。そして、陳の覚悟を決めた告白に、全豪が激震することになる。陳は大勢のメディアの前で口を開いた。

「シドニー中国総領事館における私の役割は反中分子を監視し、本国政府に報告することだった。そして、豪州には1000人以上のスパイが暗躍してあらゆる情報を盗んでいる」

 豪州で自由を手に入れた陳だが、電話はすべて盗聴され、外に出れば尾行される。中国当局の監視は止むことがない。本国に戻れば、確実に処刑されることは容易に察しがつく。陳自身がかつて、監視する側にいたのだ。目的の為なら、拉致も辞さなかったという、陳が自らの経験を語った。

 豪州に不動産を買って、妻子を逃がす中国要人は少なくない。陳らは、そのような要人の拘束と本国への送還を行うために、豪州在住の息子の拉致を計画した。

 麻酔薬で息子を眠らせ、漁船で沖合の公海上に停泊させた貨物船まで運び、そこから父親に電話をさせ、本人であることを確認させてから、本国にすぐ戻るよう脅迫した。父親は帰国に同意したが、帰国するなりただちに裁判にかけられ、死刑判決が出された。

 陳はまた、ニュージーランドでも居住権を持つ女性を拉致し、中国船籍の船で本国に送還したことがあるという。彼女もまた、拷問され処刑された可能性が高い。陳はこのような拉致を在任中に複数回行ったと告白している。

 そして陳の最重要任務は法輪功信者の監視と弾圧だった。法輪功の信者リストを作って本国に通知する。法輪功の組織にスパイを潜入させて調査もする。信者が領事館にパスポートの更新に来れば、パスポートを没収し、本国へ帰国できないようにする。危険と見なした信者は「610オフィス」に引き渡す︱という。

「610オフィス」とは、1989年6月10日に法輪功弾圧を目的に作られた秘密組織で、全ての中国外務省官僚はその存在を知っているが、中国政府はその存在を否定している組織である。 

 陳によれば、本国に送還され、取り調べを拒否して自殺したとされる法輪功信者のほとんどは実際には撲殺されているといい、「610オフィス」は日本国内にも存在するという。

 このように、中国総領事館は反中分子の摘発と監視を行うが、その他の重要任務は、豪州国内で活動するスパイや工作員の統括だ。陳が総領事館で勤務中に目にしたファイルには、豪州国内に約1000人のスパイが配置されていることが書かれていたという。ここでいうスパイには密告者も含まれていて、中国政府が指揮する海外でのスパイ活動には複数のパターンがあると陳は説明する。

 まず、本土から直接送り込まれてくるスパイ、または工作員だ。あらかじめ現地にダミー会社を作ったり、潰れそうになった会社を買収したりして、ビジネスマンとして赴任させる。そのまま現地の企業との商行為を通じて様々な情報を入手し、本国へ送付する。このような会社はスパイ活動の拠点として機能する。

 我々もそのような会社が存在することは認識していた。このように派遣される者はスペシャルエージェントと呼ばれ、盗聴やGPSによる標的追尾も行うプロのスパイ兼工作員だ。陳によると、さらに、警察学校を卒業した者が、協力者を探す目的で潜入してくるという。

 そしてすでに現地で勉強している留学生や、ビジネスマンをエージェントとして活用するパターンだ。金銭的報酬やハニートラップを使って協力者を勧誘する。ここで広く活用されているのが、留学生を使ったネットワークだ。中国人留学生をリクルートして、空港で政府要人を歓迎させたり、反中勢力の活動を監視したり、デモを妨害させたりする。特に親が中国政府の人間だった場合、その留学中の子弟が本業以外の諜報活動をしている可能性が高い。

 ニュージーランド在住のある日本人家族の息子さんは、そんな中国人留学生を友人に持つ。ある日、その友人がこう打ち明けたという。

「中国は本気で日本を盗ろうとしているぞ」

 息子さんが尋ねた。

「盗ってどうするんだ?」

 友人が答えた。

「みんな殺すつもりだ。嫌だが、俺は中国に忠誠を誓わなければならない。お前は日本に忠誠を誓え」

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■ 山岡鉄秀氏 昭和40年、東京都生まれ。2014年、豪州・ストラスフィールドで起きた慰安婦像設置の動きを知り、『Australia-Japan Community Network(AJCN)』を結成。圧倒的劣勢を覆し、2015年、同市での慰安婦像の設置阻止に成功。